ととろ(犬 14歳)がもしかしたら
友達の命を救ったかもしれない。
それは 不思議な偶然の積み重ね。
友達とランチをして 帰り際、
私は Yさんに声をかけた。
「我が家の庭のフルーツを取りに来てくれない?」
家にはりんごの木がある。そろそろ赤くなってきて
食べられそうなんだけど、足場が悪いので
ロボット足になってしまった私には 手が届かない。
Yさんに 帰り道に 寄ってもらい 収穫してもらって
それをあげようと思った。
彼女は快く「じゃあ、後ろからついていくね」と
言ってくれた。
彼女を誘った理由は もう一つある。
ととろ(飼い犬 14歳)が 前日 逝ってしまって寂しかった。
その気持ちをわかってくれる友達が
そばにいてくれたらいいなあと思ったのだ。
私たちは 車を連ねて 走っていた。
家のすぐ近くに来たとき さっきまで後ろを走っていたはずの
Yさんの車が見えないことに気がついた。
信号の変わり目で もしかしたら 離れてしまったのかと思い
路肩に寄せて 車を止め、彼女を待つことにした。
数分間待った。一向に追いついてこない。
変だなあと思い始めたときに 電話が鳴った。
「車が 突然止まってしまって 動かなくなったの」
「どこなの?」
「フリーウェーを越してすぐのところ」
2キロほど 後ろのほうで 止まっているということだった。
「私も 後ろにいたはずのYさんがいないから変だと思って
待っていたところ。じゃあ、すぐ行くね。待ってて」
車を再び走らせて 先の交差点をユーターン、
来た道を戻って しばらく走ると 反対のレーンの路肩に
Yさんの車が見えた。
そこは、中央分離帯で区切られた片道三車線ずつある幹線道路なので
見えるけれども すぐに近くにはいけない。
先の交差点をユーターンして やっと彼女のそばへ。
聞くと、突然 バッテリーの警告ランプがついて
エンジンが止まってしまったのだという。
一番右斜線を走っていたから なんとか路肩に寄せられたという。
無事に路肩に止めることができてよかったね。
さて、車が 動かなくなったらどうするか?
そう、トーイング。
彼女は トリプルA(日本のJAF)を呼び、
トートラック(牽引車)で 車を修理屋さんまで
運んでもらうようサービスに頼んだ。
そして、待つこと一時間弱、やっとトートラックがやってきた。
待っている間に彼女は考えたそうだ。
Yさんの家は そこからフリーウェーを 走ること 30分。
かなり距離がある。
もし、彼女が 我が家に寄ろうとしないで
そのまま家へと向かっていたら、
きっと故障は フリーウェーのど真ん中で 起きたことだろう。
片道五車線、100キロから120キロくらいで
どどーーーと塊で走っているど真ん中で
急に 車がストップする。
フリーウェーを走っているときに
そうそう車線変更などできやしない。
こんな風に 道の端に車を寄せるなんてとても無理だ。
フリーウェーでそんな状態になったら 追突されること 必至だ。
そして、事故が事故を呼び とんでもないことになっていたに違いない。
Yさん、「私って運が強いかも」という。
トートラックがやっと来たとき、
最初は 彼女がいつも頼んでいる修理屋さんに行くつもりだったが、
そこは かなり遠くて トーイングに お金がかかりすぎることが判明。
では、「近くの修理屋さんはないのか?」ということになり
浮かんだのが うちがいつもお世話になっている日本人の修理屋さん。
ぎりぎり5時少し前だったので 電話が通じて
無事に それほど遠くないその修理屋さんに行くことになった。
トートラックの運転手さんに 住所を伝え、
私は Yさんを乗せて 車屋さんへ。
故障車より 自分たちのほうが先に 修理屋さんへ到着。
また、しばらく待つ。
アメリカ生活は 本当に待たされることが多い。
忍耐、忍耐、また忍耐。
あまりにおそいので どうしたんだろうと電話をかけると、
そのとき、トートラックが見えた。
無事に故障車が運び込まれ 修理を頼む。
詳しいことは 明日といいながら
「エンジンはかかるけどすぐに止まってしまう」
という症状から 「ガソリンポンプの故障でしょう」との
およその診断。
とても 親切に対応してくれるSさんがYさんに
「Mスーパーの和菓子屋さんで働いていますか?」
と聞く。
「はい」と答えるYさん。
するとSさんが
「和菓子が好きでよく買いに行くんですよ。
どこかでお見かけしたなあと思っていたんですよ」
ですって。
Yさんは その日はお休みだったけど いつもはMスーパーの
和菓子店で 元気よく働いている。
丁寧な接客は お客さんに人気だ。
和菓子が好きというSさんは Yさんに好感を持っているらしい。
だから、彼女の車の修理を より丁寧にやってくれるに違いない。
Yさんと私、その偶然に
「いつ、どこで、どんな形で、どんな人に出会うかわからないね。
変なこと 絶対できないね」
と、顔を見合わせてしまった。
というわけで Yさんは 強運の持ち主だった。
そして、その強運の一端を ととろが担ってくれたような気がして
私は、とってもうれしくて 幸せな気持ちになった。
ととろ、やっぱり 私たちを見守ってくれているんだね。
ありがとう。
車を修理に出した後 我が家の庭で ととろをしのんで 乾杯!
庭から収穫したりんご、ざくろ、バジル、トマト、グレープフルーツ(ウォッカを入れてカクテルに)↓